プーシキン美術館展 横浜美術館 私的注目作品 その1

前回の続きです。

現在、横浜美術館で開催中のプーシキン美術館展で個人的に気になった作品をピックアップしてみます。

同展覧会会場は、以前お話しましたように4部構成です。その中の第1章 「17-18世紀(古典主義、ロココ)」では、やはり古典主義の代表的画家であるニコラ・プッサンの≪アモリびとを打ち破るヨシュア≫(1624-25年頃)でしょうね。

古典主義とは、クラシック(古典)時代、つまり古代ギリシア・ローマ時代の芸術を理想とする作品を描く、プッサンと同年代の芸術家達を意味します。古代ギリシアの彫像とえいば、有名な《ミロのビーナス》があります(想像してみてください)。あのように自然と調和する理想的な美が古代ギリシア芸術の本質でした。古代ギリシアと古代ローマも厳密にいえば、異なる価値観をもつ文化です。しかしながら、古代ローマ人たちは古代ギリシアの文化を積極的に取り入れました。その古代ギリシア・ローマ時代の遺産が残り、キリスト教が宗教として勝利をおさめた「ローマ」という土地は、中世ヨーロッパ人にとって特別な意味を持ちました。

しかしながら、古代ギリシア・ローマ時代後、15世紀になるまでヨーロッパで《ミロのビーナス》のような「古典的」な表現の作品は制作されませんでした。その理由は、様々な説がありますが、「古典」が文化や美術から消え去った時代(ヨーロッパ中世)を「暗黒時代」と呼びます。ちなみに建築史では、1000年頃からロマネスク(ローマ式)様式がヨーロッパでは盛んになっていましたので、「ローマ」という概念とそれに対する憧れはヨーロッパでは根強いものでした。

そして、ルネッサンス時代(15世紀から16世紀)、イタリアの画家達は、古代ギリシア・ローマ時代の文化の再生(ルネサンス)を目差しました。その代表的芸術家達が、最近東京で開催された展覧会でも注目された、ラファエロ、レオナルド・ダ・ヴィンチです。その流れは、ヨーロッパ全土に様々な形で広がっていくのですが、エル・グレコを代表とするマニエリスムが生まれる一方で、16世紀後半から17世紀にかけてバロック(時代)という画風がヨーロッパで盛んになっていきます。本当に簡潔に言ってしまえば、「理性」から「感情」へ画家達の表現方法がシフトしていく時代でもあります。このように考えると(東京で開催された)今年前半の様々な展覧会のおかげで、かなりこの流れ(ルネサンス~バロック)に添って、我々は作品を鑑賞してきていますね。

話をプッサンに戻します。前述のようにヨーロッパでバロックが流行の最中、フランス人でありながら、ローマに移住して制作活動していたプッサンは、同地で古代ギリシア・ローマ時代の古典芸術作品に自らの理想の美を見いだだします。というわけでプッサンのような作風の当時の画家達を「古典主義」と呼びます。

≪アモリびとを打ち破るヨシュア≫(1624-25年頃)は、年代的にローマに移住した年(1624年)の直後に描かれたようです。「古典主義」と我々現代人に勝手に評されているプッサンにしては、荒々しいドラマチックな感じの作品です。彼の代表作《アルカディアの牧人たち》(ルーヴル美術館所蔵)の制作年が1638 – 1640年頃ですから、≪アモリびとを打ち破るヨシュア≫を制作していた頃、まだ画家としての方向性を模索中だったのでしょうか。今回の展覧会で出会ったこの作品は、私的にはプッサンらしからぬ作風で新鮮でしたが、彼の技術の高さは十分に理解出来ます。そう考えると、このレベルのプッサンの作品を日本で観ることが出来るのは貴重だと思いました。

では、今日はこの辺で。

プーシキン美術館展 フランス絵画300年
公式サイト
http://pushkin2013.com

プーシキン美術館展 フランス絵画300年
会場 横浜美術館
会期 2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
開館時間 10:00~18:00
(8月、9月の金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日 木曜日(ただし8月1日、15日は開館)

会場 神戸市立博物館
会期 2013年9月28日(土)~12月8日(日)
開館時間     9:30~17:30
(土曜・日曜は19:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日     月曜日
(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)と11月5日(火)は休館)