ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり― 東京都美術館

2013 08 06 13 23 49

先週はアップ出来ず残念でした。学生達の夏休みもまもなく終わりますね。この時期の美術館へ行くと夏休み課題で展覧会へ来ている小学生達を多く見かけます。

少し前になるのですが、現在東京都美術館で開催中のルーヴル美術館展へ行ってきました。

上の写真は、同展覧会のポスターでおなじみの《アルテミス、通常「ギャビーのディアナ」》です。展示会場のキャプションには、制作が100年頃、出土がローマと記述されていました。作品の状態とギャービーの足下にある支えのように彫られている木をみて、なんとなく「ローマ時代のギリシア彫刻のコピー」ではないのかなあと思いました。ギリシア時代に制作された彫刻は、現存しているものが非常に少なく、我々が目にしている「ギリシア時代の彫刻」は、ローマ時代の彫刻家達が模刻したものが多いのです。もちろん、模刻といっても、ギリシア彫刻のエッセンスを我々に伝えてくれるものであり、ローマ時代の優れた彫刻家達の腕で、1つの作品として鑑賞することも十分価値があるのですが、私は、学生達に「模刻は模刻」と教えるようにしています。

私が同展覧会へ行った際(8月6日)の展示会場では、この作品が「ローマ時代の模刻」であるかどうかの情報を得ることは出来ませんでしたが、同展覧会の公式ホームページで確認したところ、やはり「紀元前4世紀の名高い彫刻家プラクシテレスの様式を汲む作品の、ローマ時代の貴重な模刻」と記載されていました(*1)。

ローマ時代のギリシア美術や文化の崇拝の流れは強いものなのですが、ローマ人達は、ギリシア人達と異なる価値観をもっていたのも事実であり、ローマ時代に制作された(模刻された)ギリシア彫刻は、やはりローマ時代の彫刻なのではないかなあと個人的には考えたくなります。でも同展覧会の「ギャビーのディアナ」の美しさには変わりないのですけれどもね。

では、今日はこの辺で。

*1 展覧会公式サイト 『ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―』〈http://louvre2013.jp/highlight.html〉(アクセス日 2013年8月28日).

ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―
The Mediterranean World: The Collections from the Louvre
会期:     2013年7月20日(土)~9月23日(月・祝)
開室時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後9時まで)
※入室は閉室の30分前まで。
※金曜日は午後9時まで。
休室日:     月曜日
※なお、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開室、9月17日(火)は閉室。

「草間彌生 魂のおきどころ」 松本市美術館

2013 08 16

残暑お見舞い申し上げます。

8月上旬、長野県松本市にある、松本市美術館へ行ってきました。

日本を代表する現代アーティストの1人、草間彌生の生まれ故郷が松本市ですが、昨年(2012年7月14日~11月4日)同美術館では、開館10周年記念展「草間彌生 永遠の永遠の永遠」を開催していました。私は見逃してしまいましたが、今回、同美術館の常設展「草間彌生 魂のおきどころ」を観ることができました。

会場に入ると目に飛び込んでくる女性の肖像画があります。1939年に描かれたこの《無題》は、鉛筆で描かれた女性の肖像画でモノクロの静かな作品です。女性の顔や衣服の上には、水玉が描かれています。幼少の頃から、草間彌生の目には、我々の目には見えない水玉が見えていたと言われています。彼女の作品のトレードマークの1つでもある、水玉ですが、この作品を描いていた10歳の彼女は、どのような気持ちで水玉を描いたのでしょうか。 人に見えないものが見えてしまうという事は、何かを背負う事でもあります。この「何か」が彼女の「たたかい」の原点だったのかもしれません(*)。

現在の同常設展22点のうち、20点が「作家蔵」です。前述の1939年に描かれた《無題》にはじまって2012年の作品(《世界の愛のすべて》《戦争の終わった幸福》《心の燃えた日》)まで、今も続いている「草間彌生」の歴史の一部を鑑賞することが出来ます。

上の画像は、同美術館の外に展示されている草間彌生作の巨大なオブジェ《幻の華》(2002年)です。高さ10mあります。真夏の松本の空に水玉が映えていました。

では、今日はこの辺で。

*ワタリウム美術館編. 2011.『草間彌生、たたかう』(ワタリウム美術館『草間彌生 ボディ・フェスティバル in ’60s 展』公式カタログ).

松本市美術館
開館時間:午前9時~午後5時まで
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日)

プーシキン美術館展 横浜美術館 私的注目作品 その4

現在、横浜美術館で開催中のプーシキン美術館展で個人的に気になった「私的注目作品 その4」です。

(出品作品リストの最終章である)第4章「20世紀ーフォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ」の展示作品の中では、パブロ・ピカソ(1881−1973)の《マジョルカ島の女》(1905)が印象的でした。美術史的にピカソというと「キュビスム」という言葉を連想します。

キュビスムというのは、それまでの西洋美術が理想とした「古典主義」や「自然主義」(同展覧会出品作品リスト第2章にあるような作品群)の価値観を根底から揺るがす新しい形の美術表現です。ピカソは、ジョルジュ・ブラック(1882-1963)と共にキュビスムの創始者でした。彼らは、物を解体して、往来の遠近法とは別の空間の中で、様々な角度から面を表現しようとしました。難解といえば、聞こえは良いですが、鑑賞者が作品を理解するために努力を要するような作品が多いです。

さて、ピカソは、膨大な作品を残しましたが、彼の美の表現の移り変わりも激しく、彼の作品群は、「〜の時代」といったように作風と年代で分けることが出来ます。彼がキュビスムを始めたのが、1907年頃だと言われていますので、同展覧会の《マジョルカ島の女》は、それ以前の「青の時代」(1901-1904)と「バラ色の時代」(1904-1906)の移り変わりの時期の作品と考えられています(*1)

「青の時代」のピカソの作品は、画面が憂鬱な気分で覆われているのような表現が多いのですが、この《マジョルカ島の女》は、「バラ色の時代」に移行する途中というだけあって、柔らかな雰囲気がします。ピカソは、スペイン生まれですが、1900年にパリに移り住んでいるので、今回の作品も確かに「フランス絵画300年」の中の一作品になるのでしょうね。

この作品は、モスクワの富豪セルゲイ・シチューキンが購入したそうですが、当時のパリで、それほど高く評価されていなかったピカソ等の「斬新な」作品群をシチューキン自身の直感で購入していたというのですから素晴らしいですね(*2)。同展覧会の中では、いわゆる「静かな作品」の《マジョルカ島の女》なのですが、不思議ともう一度観たいと思わせる作品です。シチューキンもそう思ったのでしょうか。

では、今日はこの辺で。

*1 展覧会公式サイト 『プーシキン美術館展 フランス絵画300年』〈http://pushkin2013.com/intro/〉(アクセス日 2013年8月9日).
*2 『朝日新聞』 2013年6月12日, 20-21頁.

プーシキン美術館展 フランス絵画300年
公式サイト
http://pushkin2013.com

プーシキン美術館展 フランス絵画300年
会場 横浜美術館
会期 2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
開館時間 10:00~18:00
(8月、9月の金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日 木曜日(ただし8月1日、15日は開館)

会場 神戸市立博物館
会期 2013年9月28日(土)~12月8日(日)
開館時間     9:30~17:30
(土曜・日曜は19:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日     月曜日
(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)と11月5日(火)は休館)