「ザ・ビューティフル」三菱一号館美術館 この上もなく英国的な組み合わせ、ビアズリーとアーサー王伝説

2014 04 011

前回の続きです。

上の画像は、現在、三菱一号館美術館で開催中の「ザ・ビューティフル― 英国の唯美主義1860-1900」の会場である「三菱一号館」の外壁を美術館内の廊下から撮影しました。この空間を眺めていると、煉瓦の感じといい、窓枠といい、中庭の緑まで、ロンドンの文教地区であるブルームズベリー(ロンドン大学本部や大英博物館がある地区)を思い出します。あるいは、V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)のあるケンジントンのあたりかな。それもそのはず、目の前にある三菱一号館は、英国人ジョサイア・コンドルによる設計で1894年に建てられた「三菱一号館」を復元した建物なのです。

オリジナルの建物は、ちょうど展覧会のタイトルにもある「英国の唯美主義1860-1900」と同時代に建設されたというのも単なる偶然なのが必然なのか。今回は、東京都心の英国的な空間で「英国の唯美主義1860-1900」の作品を鑑賞という、とても贅沢な時間が過ごせました。

同展覧会の出品作品の中で個人的に良かったのは、オーブリー・ビアズリー(1872年ー1898年)ですね。彼は、白黒の個性的な画風のイラストレーターですが、彼の世界観は独特で一度観ると忘れられないです。特に良かったのが作品番号120《アーサー王が吠える獣を見た事》(1893年)です。

英国の伝説的ヒーローであるアーサー王と円卓の騎士の物語は、様々なバージョンがあるのですが、15世紀のトマス・マロリーによって書かれた作品(『アーサー王の死』)が一番よく知られています。この原典(15世紀の印刷業者W.キャクストン版が最高とされている)の19世紀改訂版の挿し絵を担当したのが、ビアズリーでした。ちなみに日本では2004年に筑摩書房から『アーサー王物語』(全5冊)として、 W.キャクストン版の完訳本が出ています(現在絶版)。しかも挿し絵は、ビアズリー。アーサー王伝説とビアズリーが大好きな私は、この筑摩書房版の全五冊を購入して書棚の一番上に飾っています。

アーサー王も、ある意味とても「英国的」です。英国のパワースポットでも有名なグラストンベリーには、アーサー王の墓があるとされていますし、魔女とか妖精とか、英国のファンタジーの源流は、アーサー王伝説にあるのかもしれません(ちなみにアーサー王の異父姉は魔女として知られています)。その15世紀の原典の挿し絵に、エキセントリックな画風を描く19世紀のイラストレーター、ビアズリーが担当するというのも、伝統と斬新さが共存する英国的な組み合わせです。今回の展覧会の監修者V&A元学芸員スティーヴン・キャロウェイ氏の著書の一冊に『Aubrey Beardsley(オーブリー・ビアズリー)』(1998)がありまして、かなりのビアズリー好きとみました。実際、今回の展覧会でビアズリーの作品は、他に8点ほど出品されていました。

前回ご紹介した同展覧会のポスターに使用されているアルバート・ムーア作《真夏》(1887年)のような画風がお好きな方には、ビアズリーは、少し毒があるかもしれません。でも一度鑑賞なさってみると意外といいですよ。他には、エドワード・バーン=ジョーンズがデザインした《ブローチ》(1885年ー95年)も素敵でした。絵画だけでなく、宝飾品や家具まで、キャロウェイ氏いわく「芸術のための芸術」を楽しめる展覧会です。

では、今日はこの辺で。

参考文献

Calloway, Stephen. ,1998.『Aubrey Beardsley』New York: Harry N. Abrams.
Malory, Thomas. 2004.『アーサー王物語』(全5巻)(井村君江訳) 東京:筑摩書房.
三菱一号館.『ザ・ビューティフル― 英国の唯美主義1860-1900』(公式サイト)〈http://mimt.jp/beautiful/〉(アクセス日 2014年4月11日).

「ザ・ビューティフル― 英国の唯美主義1860-1900」
三菱一号館美術館
開催期間:1月30日(木)~5月6日(火・祝)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜日~20:00)
*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(但し、4月28日と5月5日は18時まで開館。)