「イメージの力」展 国立新美術館 「イメージの歴史は人類の歴史」ですよね

2014 05 26 16 29 59

「人類の歴史は、イメージの歴史でした」(*1)

先日、国立新美術館で開催中の「イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる」へ行ってきました。上記は、展覧会概要の冒頭からの引用です。実にいいですね。まさにその通りです。ここまで明快に言っていただけると嬉しいです。美術史側の人間としては、「イメージ」はなくてはならないものなのですが、史学や考古学の研究者達から、しばしば「イメージは曖昧」という意見をいただきます。私が推測するに、史料やデータから比較して「イメージは曖昧」と考えるのかもしれませんが、人類が創造したイメージ(作品)が目の前に存在している以上、確固たる文化を反映する「何か」として扱うべきと思うのです。

国立民族学博物館(大阪府吹田市)は、まだ行ったことがないのですが、「みんぱく」として知られており、「34万点の標本資料、8万点の映像・音響資料、65万点の文献図書資料などを所蔵する学術情報センター」です(*2)。今回の展覧会の見どころの一つが「美術館と博物館のコラボレーション」(*3)。国立民族学博物館の膨大なコレクションを「イメージの力」という視点から国立新美術館で「美術作品風」に展示するという、民族学と美術史の領域を超えた学際的な視点から構成した展覧会ともなっています。

今回の展示の特徴の一つが、イメージ(作品)を地域や時代ごとに分けるのではなく、イメージの視覚的イメージやその機能の視点から同様なものを同じ場所に集めるという展示構成です。例えば、会場に入るとすぐに壁一面に様々な国から収集されたの90個(一応数えてみました)の仮面が展示されています。大迫力です。カナダ、インド、アフリカといった多国籍の仮面の中に、日本の「おかめ」が違和感なく飾られていました。90の仮面の視線を一身に集めるようで戸惑います。でもこれがイメージの力だと思いました。

今回、大半のキャプションには作品の制作年ではなく収集した年が記されており、どの時代に制作されたのかよくわからない作品がほとんどなのですが、確かに時代は関係なく各イメージごとに展示されているわけですから、イメージだけを目でみて感じていけばいいのだと思いました。

私的に面白いなと思ったのが出品番号No.181〈プレゼピオ〉で、ポルトガルのリスボンで1987年に収集されたものです。「プレゼピオ」とは、「キリストの降誕」(キリストが生まれた晩)の場面を模型や人形で再現したものです。キリスト教版の大きなドールハウスというのでしょうか、ミニチュアの馬小屋の模型に、そこで生まれたキリスト、聖母マリアと父ヨセフ、(天使からキリストが生まれるというお告げを聞いた)羊飼い、(キリストに会いにきた)東方の三博士達が、天使や動物達に囲まれているものが一般的です。ヨーロッパ、とくにカトリック系の国(イタリアなど)や教会でクリスマスのあたりになると飾りはじめていたような記憶があります。ちなみに日本でも「イタリア製降誕セット『プレゼピオ』」が教文館で販売されていました(*4)。話がそれましたが、今回展示されていた色とりどりの造花がこれでもかと盛られているキッチュな〈プレゼピオ〉には驚きました。「キリストの降誕」という聖なるイメージですから、キッチュと表現すると失礼かもしれないですが、美術作品としてみていると、他の言葉がみつからないです。教科書に載っているキリスト教美術に慣れている方々には新鮮な作品だと思います。

人類が持つイメージの普遍性は、データや史料重視の学問の視点では、証明出来ない曖昧なものかもしれませんが、(宗教学ではあたりまえの概念ですし)民族学や人類学では容易に証明出来る可能性を示唆する展覧会だったと思います。

では、今日はこの辺で。

参考文献

*1.国立新美術館公式サイトより『イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる』「展覧会概要」〈http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/power_of_images/index.html#link2〉 (アクセス日 2014年5月30日)
*2.国立民族学博物館公式サイトより「みんぱくとは」〈http://www.minpaku.ac.jp/aboutus〉(アクセス日 2014年5月30日)
*3.国立新美術館公式サイトより『イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる』「見どころ」〈http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/power_of_images/index.html#link2〉 (アクセス日 2014年5月30日)
*4.イーショップ教文館公式サイトより「イタリア製降誕セット『プレゼピオ』」〈http://shop-kyobunkwan.com/category-1811/〉(アクセス日 2014年5月30日)

イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる
国立民族学博物館創設40周年記念
日本文化人類学会50周年記念
会場:国立新美術館 企画展示室2E
会期:2014年2月19日(水)~ 6月9日(月)
毎週火曜日休館 
開館時間:10:00~18:00 金曜日は20:00まで
入場は閉館の30分前まで。