バルテュス展 東京都美術館 バルテュスについて私的発見 その2

現在、東京都美術館で開催されている「バルテュス展」について、前回の続きです。

今回の展覧会は珍しいバルテュスの初期の作品も出品されていました。その中でも「私的発見その2」だったのが作品番号No. 006《聖木の礼拝》(1926年)、No.007《十字架の発見と検証》(1926年)、No.008《十字架の称揚 エルサレムの十字架を持ち帰るヘラクリウス帝》(1926年)。いづれもピエロ・デッラ・フランチェスカの〈聖十字架伝〉にもとづいた作品です。

15世紀イタリア・ルネサンスの画家、ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1415ー1492)の作品の特徴といえば、まず光と影を用いた遠近法を用いた作品です。そして若干円筒形のような身体の描き方や、画面も数学的な視点から構成しているようで理性的で静かな作風が特徴です。もちろん、上記の出品作品(No. 006、No.007、No.008)は、バルテュスがピエロ・デッラ・フランチェスカの作品にもとづいて制作したものなのですが、その後のバルテュスの作品をみていると、ピエロ・デッラ・フランチェスカの影響を強く受けていたことが推測出来ます。もちろんバルテュスの作風も時代を経て変化していくのですが、「しんとした」ような静けさ、そしてやや円筒形の身体表現、そして光の使い方など、バルテュスとピエロ・デッラ・フランチェスカの画風の共通点は多いです(もちろん異なる点も多くありますが。。)。

このように美術史では、画家の作品の特徴を探るために初期の作品(素描も含む)を調査することがあります。芸術というのものは、突然降って沸いてくるものばかりではありません。どの画家も自身の作風を創造するまでの過程(画家として初期の時代)で、ほとんどの場合「師匠」や「お手本」が存在します。例えば、ローマ美術のお手本はギリシア美術でした。ピカソはセザンヌの作品に衝撃を受けてキュビズムを創り出します。美術は、個人、文化の歴史の積み重ねの上に創造されるイメージであることが、今回のピエロ・デッラ・フランチェスカに関連した出品作品(No. 006、No.007、No.008)からも理解出来ます。

バルテュスは、1961年から1977年の間、ローマのアカデミー・ド・フランスの館長としてイタリアに赴任しています。そう考えるとバルテュスは、イタリアに縁があったのですね。この時イタリアで制作された作品が、前回展覧会ポスターで紹介した作品番号No.050《読書するカティア》(1968−76年)です。私はこの作品がピエロ・デッラ・フランチェスカの作品に一番近いと感じます。同じイタリアの空気が時代を超えて2人の画家達(バルテュスとピエロ・デッラ・フランチェスカ)によって描かれているようで、私は《読書するカティア》がバルテュスの少女を描いた作品の中では一番好きです。この作品をみていると、私事ですが遺跡をリサーチするために走り回ったローマの夏を思い出します。

というわけで、今回の「バルテュス展」でやっと画家バルテュスを少し理解出来たように思いました。

では、今日はこの辺で。

バルテュス展 公式サイト

http://balthus2014.jp

バルテュス展
東京会場
会期:2014年4月19日(土)~6月22日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
開室時間:9:30~17:30(金曜は20:00)、入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、

京都会場
会期:2014年7月5日(土)~9月7日(日)
会場:京都市美術館
開館時間:9:00~17:00、入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし7月21日(月・祝)は開館)