「指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き」 国立西洋美術館 指輪を通して4000年の西洋美術史を学ぶ

2014 09 03 14 49 07

先日、現在東京上野の国立西洋美術館で開催中の「指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き」展へ行ってきました。上の画像は、美術館のエントランスにあった大型ポスターです。同展覧会のポスターのデザインの中でベストなデザインと思ったのですが、他では見かけませんでした。肝心の展覧会の中身とはいうと、これがですね、想像以上に良かったのです。

4000年前のエジプトの指輪からはじまって、現代のティファニーやブルガリの指輪まで、約300点を西洋美術史的な視点から各時代ごとに紹介しています。指輪のデザインや用途は、その指輪が作られた社会文化の価値観を鮮やかに反映していました。美術史は本当に面白いです。

橋本貫志氏(1924-)が収集した宝飾品約870点、その名も「橋本コレクション」が国立西洋美術館に寄贈されたのが2012年(*1)。その記念企画の展覧会が同展覧会なのですが、とにかく橋本氏の審美眼の素晴らしさと収集力の情熱に圧倒されます。

例えば、前述の4000年前のエジプトの指輪の代表的なデザインがスカラベでした(上の画像左上端の指輪は作品番号1)。スカラベは、俗に「糞転がし」と呼ばれている昆虫です。太陽崇拝が盛んであった古代エジプトでは、丸い糞を転がしているスカラベは、太陽(丸い糞)を転がしている聖なる昆虫と考えられていました。紫の石は、アメジスト。金とアメジストというシンプルなデザインですが、この指輪の持ち主は「お護り」として身に付けていたと考えられてます(*2)。

他には、ギリシア神話やキリスト教に関連したイメージを描いた指輪や、贅沢な宝石をふんだんに使ったファッション性の高い豪華な指輪など、土地や時代によってそのデザインや材料は変化していきます。指輪はとてもパーソナルな装飾品のようですが、その時代の流行を考察するための重要な証拠品にもなりえることが同展覧会でよくわかります。私は個人的にデコラティブなデザインよりも、原石に近いようなデザインが好きなのですが、作品番号95《シュランバーゼーのデザインによるティファニー製リング》(1960年代)のきらめくような沢山のダイヤモンドと金の指輪には見惚れてしまいました(*3)。一方、作品番号87の《ガラスの指輪》(1931年)はガラス製とはいえ宝石の指輪に負けないほどの美しさ。やはりアール・ヌーヴォーの代表的デザイナーであるルネ・ラリックが制作したものでした。

エジプト時代のお護りとしての指輪(スカラベ)とは意味が異なるかもしれませんが、個人が自分の好きな指輪を身に付けることも、ある意味「お護り」のようなものです。そして戦争の時代、個人のプライドを「護る」指輪が「ポイズン・リング」。敵軍に捕らわれた時、自らで命を絶てるように毒が入った指輪を意味します(作品番号324,325,326)。スパイ映画だけのものではなかったのですね。

海外でも、これほどの指輪のコレクションは、珍しいのではないでしょういか。近い将来、是非、国立西洋美術館の常設展として「橋本コレクション」の全作品の展示を希望します。

では、今日はこの辺で。

参考文献

*1. 同展覧会解説より
*2. Ibid.
*3. ジーン・シュランバーゼーの作品はティファニーの公式サイトでも楽しめます。
「ジーン・シュランバーゼーの作品 Tiffany & Co.」〈http://www.tiffany.co.jp/Shopping/CategoryBrowse.aspx?cid=288190#p+1-n+10000-c+288190-s+5-r+-t+-ni+1-x+-pu+-f+-lr+-hr+-ri+-mi+-pp+〉(アクセス日 2014年9月8日)

橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き

会 期:2014(平成26)年7月8日(火)~9月15日(月・祝)
会 場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休 館:月曜日(ただし9月15日は開館)

展覧会特別サイト
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/rings/index.html