「奈良原一高 王国」 東京国立近代美術館 哀しいほど異なる二つの「王国」

2015 02 27

東京国立近代美術館(MOMAT)の「高松次郎ミステリーズ」展を鑑賞した後に、同館で開催中の奈良原一高の「王国」展へ行きました。写真家である奈良原一高は、1931年生まれ。同展覧会は、彼が1958年(昭和33年)に発表した「王国」を紹介する内容でした。テーマは、二つの外部(世間)から独立した「王国」です。一つは、北海道のトラピスト修道院。もう一つは和歌山の女性刑務所。

トラピスト修道院といえば、同修道院が製造したクッキーをかなり前にいただいた事があるのですが、とても美味しかったことを記憶しています。MOMATで、こんな形で再び出会うとは、思ってもいませんでした。同修道院の歴史は古く、1896(明治29)年、フランスからの9人の修道士達によって創設された日本最初のカトリック男子修道院だそうです。

奈良原のファインダーを通したトラピスト修道院の内部は、まさに神の「王国」でした。それらの写真は、素晴らしいの一言。北海道の地にありながら、別世界に生きる修道士達の横顔をみていると、彼らの日常生活の中では神の声が聞こえているのではないだろうかと思えてきます。それも奈良原の巧みな構図と光の使い方があってこそと思うのですが、洋風な修道院の建物のたたずまい、壁に何気なく飾られている聖母マリア、聖書を読む修道士の表情など、どの作品も素朴なのに神々しいのです。

一方、奈良原がとらえた和歌山の女性刑務所もまた、別な「王国」でした。こちらは、「神の国」ではない、外部から隔離された国。自ら望んだのではないけれども、そこにいることを強いられた女性達。正直、かなりショッキングな写真もありまして、私は、今回の展覧会の写真集を購入するのを断念しました。それほど、トラピスト修道院と和歌山の女性刑務所は、哀しいほどの違いがあるのですが、どちらも確かに「王国」なのです。奈良原の厳しい目が、彼の作品を通じて我々に伝わってくる内容でした。

同展覧会は、3月1日(日曜日)が最終日です。私的には、もう一度行きたいと思わせる久々の写真展でした。

では、今日はこの辺で。

奈良原一高 王国
東京国立近代美術館
会期:2014年11月18日(火)~2015年3月1日(日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日
展覧会公式サイト
http://www.momat.go.jp/Honkan/naraharaikko/index.html