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サンドロ・ボッティチェリ《若い青年の肖像》 アートの聖地巡礼(英国)

英国、ロンドン、ナショナル・ギャラリー所蔵で、もう一度見たい作品は、いろいろある。その中でも、こちらの作品は、別格。

サンドロ・ボッティチェリの《若い青年の肖像》。以下の画像は、ナショナル・ギャラリー公式サイトからダウンロードした(クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利-改変禁止の条件にてダウンロード)。

Sandro Botticelli
Portrait of a Young Man
probably about 1480-5
Tempera and oil on wood, 37.5 x 28.3 cm
Bought, 1859
NG626
https://www.nationalgallery.org.uk/paintings/NG626

ちなみに、私が現地で撮影した同作品の画像がこちら。

ナショナル・ギャラリーに多くの名品はあれども、今まで知っているアーティストの印象が一新した作品のひとつだった。

ボッティチェリといえば、イタリア、フィレンツェにあるウフィツィ美術館所蔵の《プリマヴェーラ》や《ヴィーナスの誕生》が有名だけれども、私は、断然、この《若い青年の肖像》が好きだ。

ロンドンに長い間住みながら、ナショナル・ギャラリーへ訪れる時間もなかった。すぐ近くにあった名品だったのに。でも、自分で撮影した写真は、当時の空気や自分の感情を思い起こさせてくれる。

ルーベンス 《二人のサテュロス》 〜 アートの聖地巡礼(ドイツ)

ピーテル・パウル・ルーベンスのファンであれば、アルテ・ピナコテークは、間違いなく巡礼すべき聖地だ。

ルーベンスは、バロック期(1600年頃~1720年頃)の代表的なフランドルの画家であり、巨匠と呼ばれるに相応しいかもしれない。

外交官でもあった彼は、大規模な工房を運営して、大作を大量生産していた。いろいろな説があるが、弟子達の描いた作品にルーベンス本人が仕上げをするという工程が通常だったようだ。

となると、どこまでがお弟子で、どこまでがルーベンスが描いたのか、意外と一目瞭然な場合もある。たいてい、描かれている登場人物の顔とか、そのあたりを観察するとわかることが多い。

それにしても、アルテ・ピナコテークには、十分すぎるほどのルーベンスの大作が展示されている

前置きは、これくらいにして、このアルテ・ピナコテークで、ルーベンスの素晴らしさがわかるのは、なんと言っても《二人のサテュロス》だ(*1)。

半人半獣なので「二人」と言っていいのかわからないけれども。ギリシア神話に登場し欲望のままに行動する、どちらかというと「ワル」なキャラクターとして描かれる。

作品の高さは、80cmもない。ルーベンスの他の作品と比較して、それほど大きくない作品と想像していただけるだろう。

サテュロスは、ギリシア神話のワインの神ディオニソスの仲間として描かれることが多い。というわけで、この《二人のサテュロス》では、何とも言えない悪の表情を浮かべ、こちらを見据えるサテュロスの手に葡萄(=ワインの象徴)が握られている。いきいきとした葡萄の表現も見事ながら、その房を潰さないように持っている手の表現に驚く。指の力加減までが伝わってくるようだ。

血の通った顔や皮膚は、精霊とは思えないほどリアル。髭や角にも注目してほしい。これらの表現を見ていると、バロック期とはいえ、フランドル地方の北方ルネサンス期(1400年頃~1540年頃)に活躍したローヒル・ファン・デル・ウェイデンの作品を思い出す。

一方後ろにいるサテュロスは、ただただ、欲望のままワインを飲んでいる。理性的なルーベンスとは思えない自由奔放なタッチだ。宗教画、神話画、歴史画、なんでもござれのルーベンスなのだが、彼のアーティストとしての腕の良さがわかる一品。

(画像は、著者が撮影した、ドイツ、ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク所蔵、ルーベンス、《二人のサテュロス》)

マドリード、4日目、ティッセン=ボルネミッサ美術館、マネ、《(正面を向いた)乗馬服の女》

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マドリード4日目、ティッセン=ボルネミッサ美術館の個人的に気になった作品を紹介しております。

画像は、エドゥアール・マネの《(正面を向いた)乗馬服の女》(1882年)です。晩年のマネは、季節の女性シリーズというテーマで、春、夏、秋、冬をテーマに「パリの女性像」を描くという試みをはじめました。この《乗馬服の女》は、夏をテーマにした女性像を描いてます。

同シリーズの《春》は、1881年に完成し、サロンでも評判がよかったようです。そのため、マネは、この《乗馬服の女》の制作に力を入れており、横顔を含めた3パターンの作品を準備していました。そのため、画像の作品は、「正面を向いた」バージョンということで、《(正面を向いた)乗馬服の女》と呼ばれています。余談ですが、2014年に米国ロサンゼルスにあるJ・ポール・ゲティ美術館が、前述の《春》を6510万ドル(当時の日本円で75億円)で落札して評判になりました(*)。

さて、この《乗馬服の女》は、マネの晩年の傑作《フォリー=ベルジェールのバー》(1882年)とちょうど同じ頃に描かれたと考えられます。まず、目に入ってくるのが、女性の白い顔と意志の強そうな瞳とキリッとした口元です。そして彼女の身につけている黒い乗馬服と帽子がその白い顔をより一層引き立てています。

そいういえば、マネは、意外なほど黒を用いた作品を数多く描いています。黒は、構図の中で配分が多いと一見、作品全体が地味になってしまいそうな難しい色だと思います。しかし、マネが描く黒は、スパイスの効いた華やかな印象を見る者に与えます。

この作品を制作していた頃のマネは、かなり体調が悪かったそうです。確かに、《乗馬服の女》に描かれている背景の空の色は、我々が想像する「夏の空」とは異なるかもしれません。しかし、マネは、エレガントかつ力強くたたずむこのパリジェンヌの姿に夏のイメージを見いだしたようにも思えます。

さて、来月、マネの《フォリー=ベルジェールのバー》が来日します。詳細は、また後日。

*「マネの肖像画「春」、予想上回る75億円で落札」ロイター2014年11月7日09:56配信
https://jp.reuters.com/article/primtemps-idJPKBN0IR02M20141107(2019年8月29日11:19 UTC)