ガッラ・プラキディア廟の中に入るとヴォールト型の天井がある短い廊下があります(その先に「黄金の夜空」がある主室があります)。ちなみにヴォールト型は、「かまぼこ」の上の部分を想像していただければわかりやすいと思います。画像は、建物内の扉のすぐ上に半円形の部分に描かれている《善き羊飼い》と美しい文様が描かれたヴォールト型の天井です。これらは、モザイクで出来ています。
《善き羊飼い》に注目してみましょう。十字架の杖をもった羊飼いが、6匹の羊たちに囲まれています。頭に光輪が描かれていることから聖なる人物であることがわかります。そして、羊たちの視線は、羊飼いに向けられています。新約聖書の中で、イエス・キリストは、羊達(信徒達)を導く「善き羊飼い」として記述されていることから、十字架の杖を持つ青年がイエス・キリストであることがわかります。
初期キリスト教時代より、《善き羊飼い》はローマ帝国内の埋葬美術でよくみられました。しかしながら、帝国内でキリスト教が公認されていない時代は、(少なくとも私の知る限り)《善き羊飼い》は十字架の杖を持つことはありませんでした
313年にキリスト教が公認されてから、その表現はより自由になりました。このガッラ・プラキディア廟は、信心深いガッラ・プラキディアの命によって5世紀半ばに造られたことから、イエス・キリストも羊たちも生き生きと描かれています。ちょっとした表現の違いのようですが、キリスト教の歴史と共に美術の表現が変化していることがわかります。